受け継がれる職人気質

丹波焼の伝統技法の一つ「イッチン描き」。轆轤に乗せくるくる回したご飯茶碗にするすると描いてきます。


陶芳窯

 陶芳窯を立ち上げられた初代・清水忠義さんは、1979年に丹波焼の伝統工芸士(※注)になられた数少ない存在で、多くのお弟子さんを育て丹波焼発展の為に尽力されてきました。今では一線を退かれ、現在陶芳窯では、忠義さんの息子さんである美好さんが2代目として窯を営まれています。
 工房を訪ねると、美好さんがご飯茶碗にイッチン模様と呼ばれる伝統的な装飾技法を施す作業の真っ最中でした。成形したご飯茶碗を逆さまにしてろくろ台に置き、手回しで回転をつけながら、そこにスポットを使って模様を描いていきます。波のように見えますが、始点と終点がきっちり収まるところに熟練の技が光っています。お話を伺うと、忠義さんと一緒に約20年間、毎日のように同じ空間で仕事をし、その背中を見ながら技術を学んでこられたそうです。そんな美好さんの作品は実用的で長く使える食器類が中心です。
 軽くて持ちやすくて使いやすい、さらに収納した時には重ね易いものをと利便性を追求され、またデザインではイッチンや鎬(しのぎ)、墨流しと丹波焼に伝わる伝統技法をもちいた多彩な装飾が施されており、おまけに価格もリーズナブルな器がお店には所せましと並んでいます。色目も飽きのこない、どこか温かみのある素朴な感じが出るようにと意識して作られているそうです。
 忠義さんの作品も併せて見せて頂きましたが、他では見たことがない黒いイッチン模様にしのぎの入った器や珍しい墨流しの模様が描かれた壺、登り窯で焼かれた花瓶等決して真似出来ないようなものばかり。「こういう作品は陶芸家としての軌跡を残す意味で好きですが、技術を磨くにはあくまでも毎日毎日繰り返し行う地道な作業が大切です」と忠義さん。美好さんはそんな父の焼き物に対する姿勢や考え方、技術を一番間近で見続けてきたからこそ、派手さはないものの、誰にでも愛され使われ続けるような器をその磨かれた技術でただただ真摯に作っておられます。
 美好さんは「僕は芸術家というより職人ですね」。言葉こそ少ないものの、その一言に父・忠義さんから受け継がれたものが集約されているように感じました。そんな生粋の職人肌親子ですが、決して気難しい感じの方ではありません。とても明るく気さくで、美好さんは大の野球好き、忠義さんはお酒の好きな人当たりの優しいおじいちゃんです。野球の話や昔話でも随分盛り上がりました。
 陶芳窯さんは窯元群の中心、通称「やきもの通り」を入ってすぐの所にあります。職人親子の作品をご覧に、またお二人との会話を楽しみに是非お店に足をお運び下さい。

※注
通商産業大臣指定の日本伝統工芸士。文字通り、伝統産業の卓越した技術者に認定される伝統工芸士は、その技術の伝承を使命としています。


住所:篠山市今田町上立杭447-1 →google mapでみる
電話:079-597-2072
営業時間:9時~18時(夏季)9時~17時(冬季)※基本的には年中無休。不定休。

陶芳窯二代目の清水美好さん。朗らかなお人柄ながら、その仕事ぶりは父親譲りの職人気質です。

器面に描かれた波々模様。不思議と最初と最後が互い違いに収まります。

取材時に見せていただいたイッチン技法が施されたご飯茶碗。焼き上がりは模様部分がすこし盛り上がり、器に立体感を与えます。

葉文貼付け、鎬手、イッチン描き。陶芳窯さんでは、昔ながらの丹波焼の技法が施された器たちを見ることができます。

イッチンが施された徳利。素朴ながら徳利らしい佇まいが魅力的。奥に見えるのは「墨流し」という技法。

釉薬で菊花模様が描かれた入れ子の浅片口。

ずらーっと並ぶ器たち。派手さはありませんが、限られた技法の中でこれだけの豊かなバリエーションを生み出すのは日々の仕事の賜物です。

陶芳窯さんのギャラリースペースは2箇所あります。こちらは大通りに面した店舗からの1枚。

やきもん通りに面した店舗はご自宅の一角に設けられた質素な佇まい。

こちらは清水忠義さん作の傘立て。今ではほとんど作ることがないという大作です。

 


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2015-07-26 | Posted in 買えるとこNo Comments »