陶芸家・板谷波山の生涯

吉田三郎「波山胸像」
吉田三郎/波山胸像


特別展:「没後50年 板谷波山展」

 この度、兵庫陶芸美術館では9月6日から11月30日まで日本近代陶芸の巨匠 板谷波山(いたやはざん)展が開催されています。この展覧会は、茨城、山形、東京とこれまで関東中心に開催され、本巡回展における関西唯一の会場でかつ最終会場となります。
 本展は、板谷波山という1人の陶芸家に焦点を絞り、その学生時代から晩年まで、作品とともに、陶芸家板谷波山の人生そのものをたどることができる内容となっています。
 まず第1章では、東京美術学校(現・東京藝術大学)から金沢での教員時代を経て、東京に戻り陶芸家としてデビューするまでの波山の修業期を紹介。東京美術学校では、岡倉天心や高村光雲の指導を受け、芸術家としての基礎が形成され、彫刻科に在籍した波山の卒業制作「木彫 元禄美人」からは、その後に制作される陶芸作品の技術的な礎を垣間見ることができます。
 第2章では、波山が東京・田端に開窯し、陶芸家としてデビューする明治後期から、「日本美術協会展」や「農商務省展」などの公募展に大作を出品し、陶芸家としての名声を高めていく大正前期ごろまでの作品を紹介。マジョリカ陶器やアールヌーヴォーなど、当時のヨーロッパの最新流行を取り入れ、自身の表現へと取り入れていく姿を作品を通じて知ることができます。
第3章では、公募展を離れじっくりと自己の作陶と向き合っていった昭和初期までの作品が紹介されています。それまでに様々な様式を取り入れた経験を基に、いよいよ自分のスタイルを確立していく時期と言えます。その中で波山の代表的な作風として誕生したのが「葆光彩磁(ほこうさいじ)」。まるでベールで包まれたような優しい発色が、どこか幻想的で蠱惑的な印象を与え、吸い込まれるように見入ってしまいます。
 第4章では、大正後期以降から晩年に掛けての、いわゆる円熟期を紹介。これまでの器のデザイン(装飾)で魅せるというスタイルから、器そのもののプロポーションで美しく魅せるというスタイルに変化。陶磁器の最高峰と言われる中国古陶磁や官窯スタイルの学習の成果を見て取ることができます。
このように常に新しいものを取り入れ、それを自分なりにアレンジし、作陶に挑み続けていった波山。東京を中心に活動していたこともあり、関西ではあまり知られていないそうですが、難しいことを考えず、ただただ美しいと思える作品が一堂に介しております。また文中でも紹介しましたように、一人の作家から生まれたとは思えないスタイルの数々を目にすることができるので、好みのジャンルを問わずお楽しみいただけると思います。


会場:兵庫陶芸美術館 →google mapでみる
電話:079-597-3961
会期:2014年9月6日(土)~ 11月30日(日)
観覧料:一般1000円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料(17時以降に観覧される場合には、夜間割引料金になります。)
開館時間:(10月31日まで)10時~19時 (11月1日~11月30日)10時~18時 ※入館はいずれも閉館時間の30分前まで
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は営業し、翌日(火曜日)は休館)
駐車場:58台(無料)
ホームページ:特別展のページはこちら
 
同時開催テーマ展:丹波今昔物語(Part1)会期:~9月19日(金)
同時開催テーマ展:丹波今昔物語(Part2)会期:9月20日(金)〜平成27年2月18日(水)


波山の最初期、石川県工業高校赴任時代の作品。(左から)鴨形花瓶 / 海水水着少女像 / 陶彫 童子像
(左から)鴨形花瓶 / 海水水着少女像 / 陶彫 童子像

幻想的なベールに包まれた葆光彩磁の作品。葆光彩磁孔雀尾文様花瓶
葆光彩磁孔雀尾文様花瓶

葆光彩磁も種類によって微妙に雰囲気が異なります。こちらはベール感よりマット感が強い作品。葆光彩磁禽果文花瓶
葆光彩磁禽果文様瓶

本展覧会のメインビジュアルを飾った「重要文化財 葆光彩磁珍果文花瓶」はぐるりと一周くまなく見ることができます。
重要文化財 葆光彩磁珍果文花瓶

本展覧会では、作品以外にもスケッチや下絵、制作道具や精査咲く風景の写真など、板谷波山に深く触れることができるためのツールが揃っています。
彫刻刀で唐花文の薄肉彫を施す波山 昭和37年頃

実際に波山が使った道具や、製作途中の作品など、一人の人物に焦点を当てた展覧会だからこそ見ることができる貴重な資料も多数出品されています。
波山着用の作業ガウン

巡回展ならではの豪華な図録も販売中。
豪華な図録も販売中。A4変形版 304ページ 2500円(税込)

 


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2014-09-19 | Posted in 観るとこNo Comments »